買えない人(07.03.10)
今回のコラムを書くにあたり、これを書いてもいいのかなとちょっと(もしかしたらかなり)迷いました。小心者の私は抗議が怖い。
でも、無理に、絶対に“こうしろ、ああしろ、こうはいけない、間違っている”という論調ではなく、事実をありのままにお伝えし、知って頂くことが大事である。
これを読んで、こうしなければと思い込むことなく、どうご判断するかは各自にお任せすればいいのかなと思い、思い切って書くことにしました。
前置きが長くなりましたが、不動産業界では“買えない人”という言葉がよく使われます。
買えない人とはどういう人を指すのか。私が思いつく範囲でタイプと特徴をお伝えします。
・あれこれ考え過ぎて判断、決断ができない。
住まいの購入は金額も大きく、それだけ生活や人生に大きな
影響を多方面に与えます。その影響が広く大きいため、
すべてのことを想定し始めると、買えなくなります。
こうなったら、ああなったらと考えれば、
購入しない方がよいという答えにしかなりません。
なぜなら、住まいの購入は束縛や重みを持たせますので。
・各物件を悪い点ばかりが目に付きネガティブに考える。
住まい探しの場合、残念なことながら客観的に見ての
100点満点は存在しません。良いことの裏には必ず悪い
ことが存在するからです。
これを主観で見た場合、客観的に見た良し悪しの評価が
人により変化し、各物件の評価が変わります。
自分にとって良いのか悪いのかというご判断をせず、
実際に住むことになる自分が、客観的な分析ばかりで、
評論家のように悪い点ばかりを取り上げたら、候補になる
物件はなくなってしまい、購入するのがないということに。
また、物件の見方でも、買えなくなるケースがあります。
一般論)評価の仕方には、相対評価と絶対評価があります。
相対評価とは全体の中から順位付け。(何位)
絶対評価とは個々の評価付け。(何点)
物件の見方、選び方の手順は、まず市場に出ている大量の
情報の中から、ある程度の数まで候補を絞り込む。
その中から、実際に現地を見学したりして更に絞って
いくのですが、ここで全ての物件を絶対評価をしてしまうと、
何も残らないという結果に。(減点法ならなおさら)
まずは、相対評価で、自分にとっての一位もしくは二位までを
絞り込んで、さらにそのうえで、最終的に絶対評価をする。
この手順でいかないとなかなか検討・購入まで残るのは難しい。
ネガティブ、減点法、欠点ばかりを見ると、何も買えない。
必ず、どんな物件でも悪い点をいくらでもあります。
プロが否定的なことを言い出すときりがないくらいに。
・人も何もかも信頼・信用しない。
我々不動産屋だけではなく、人も物もなにもかも信頼できない
となると、大きな金額を信頼できないものに出せる道理はなく、
購入できなくなる。
最近の社会を見ていれば、どんなに大きな会社であろうが、
いわゆる信頼感のある職業についている人であろうが、
不正、不祥事、不始末は起こしています。
なら、不動産屋は?建築会社は?
耐震偽装、欠陥住宅、強引な営業など。
もともと信頼感が他業界よりも劣る業界ですから、
なおさら難しくなりますよね。※
※これをより信頼が得られるように業界の地位向上を自助
努力で改善しようという意識を持った人たちも多い。
・現実を受け入れず無い物ねだり、自分の希望ばかり。
不動産には相場があります。流通の市場があります。
市場、相場があるということは、良い物件には高い評価がつき、
安い物件にはそれなりの正当な理由があります。
私が(中古でもいいから)ベンツを欲しいとします。
希望:走行距離5万km、型SL600、年式5年以内、価格100万円
でも、現実の中古車市場では、こんな希望が適うことは無理。
それでもこれじゃなければ買わないというなら、
探している、欲しいと言っても、それは夢であり、
実際に買うことはできない。なぜなら売り出されないから。
この現実の相場や不動産市場を受け入れず、
自分勝手の希望ばかりを貫いていくと買うことはできません。
さらにこれは、物件は存在しているが価格面で折り合わない
という場合と、そもそも希望する物件が存在しないという
ふたつのタイプに分かれます。
価格面で折り合わないのは、予算や希望条件を見直すことに
より、購入できる可能性は広がります。
しかし、もともと存在していない物件を探すのは不可能。
例えば、墨田区で台地面の地盤が良いところなど。
存在しないものをいくら探しても、それは宝探しみたいなもの。
ざっと思いつくところを書き出してみました。でも、お気持ちは分かります。これが正直な心情でしょう。私だって、判断できなかったり、否定的だったり、信頼しなかったり、夢を追いかけたりします。
住まいを購入する、持ち家に暮らす。これって、法律で定められているわけでもなく、人生の義務でもなく、絶対ではないですよね。
買えない人という題で書き始めましたが、買わなくてもいいのではないでしょうか。
いろいろなことを想定し臨機応変に対応できるようにしておく。高額なお金を出してまで購入する物件はない。世の中絶対はないから、高額な資金を安心して拠出できない。希望が適わないなら賃貸でもいい。
いいんじゃないでしょうか。生き方、暮らし方も多様化してきた現在、無理に買うことはなくてもいいと思います。賃貸市場も良くなってきましたし。
私は、どういう考え方も、賃貸と購入のどちらも否定しません。人それぞれでいいし、どういう考え方も、賃貸と購入のどちらにも、良し悪しがあって、絶対的に“これがいい、どっちがいい”とは言い切れません。
ただ、購入の方が自分たちにとって良いことが多い、では購入しようと思い、動き出した方は、ご紹介した住まいの探し方、購入の仕方を参考にしてみて下さい。
このコラムを読んで、否定的に思った方は、もうすでに買えない人へと向かっていますよ、なんて(^^♪
住まいの購入、大きな金額になる買い物。どこか、清濁併せ呑むくらいの器量、なんとかなるさという楽観、良いところもあるよ住めば都だよという大らかさが必要なのかもしれません。
我々は、走りすぎたり、大きくかまえすぎたりした際は、冷静な分析とアドバイスでお手伝いします。
最後に、2月28日にNHKで放送された「その時歴史は動いた:第279回・天下は我が掌中にあり~黒田如水・もうひとつの関ヶ原~」で使われた言葉を紹介して終わりにしたいと思います。
「戦いは、考えすぎては勝機を逸する。たとえ、草履と下駄とをちぐはぐに履いてでも、すぐに駆け出すほどの決断。それが大切だ」
江戸時代に記された歴史書『常山紀談』から、一部意訳して引用しました。
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